研究概要 |
1)徳島県東祖谷山村の落合峠における草地の復元計画策定のために,希少種の生育適地に関する環境評価マップを作成した.植生調査から,草本植物の出現パターンは,ミヤマクマザサの生育状況を反映する4グループに類型化された.一方,GISを用いた検討から,ミヤマクマザサの生育状況は,湿性状況を適切に示すことが知られる地形指数と,落合峠において夏季に卓越する南風の風当たりの程度,および冬季に卓越する北風の風当たりの程度の3つのパラメータで推定できることがわかった.これらから,希少植物の潜在的生育適地図を作成した.[鎌田] 2)現在火入れによって維持されている塩塚高原(愛媛・徳島県境,海抜1043m)において,ススキ型の半自然草地植生の多様性とその季節変化を明らかにすることを目的として,植物相の調査を行うとともに,優占種の異なる32の群落において毎月一回の植生調査を行った.その結果,火入れの行われているスタンドと比較して,刈り取りのみのスタンドで一年を通して種数,多様度指数共に高い値を示し,刈り取りは火入れよりも植物の種多様性を維持するためには効果的であることが示唆された.[石川] 3)窪地堆積物の花粉,植物珪酸体および炭化片から,剣山地落合峠周辺の植生と植物燃焼の変遷を調べた.約800年前以前には,ブナ,コナラ亜属などの落葉広葉樹林に,ツガとモミ属が混生していた.約800-300年前には,特にヅガやモミ属が減少し,森林の一部は草原に移行した.草原の形成は約800年以降に増加した火災に起因する可能性がある.ススキ属珪酸体量が極めて少ないため,草原の植生型はススキ型ではなかったと考えられる.約300年前以降には,南側斜面のスギの植林を示すスギ属花粉の急増が認められた.[三宅] 4)上記結果を東祖谷山村の地域住民,NPO,行政等に報告し,今後の活動方針についての意見交換の場として「四国草原保全研究フォーラム」を立ち上げ,第1回フォーラムを12月に東祖谷山村で開催した.[山中・鎌田]
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