研究概要 |
(1)剣山地天狗塚と夫婦池,太平洋沿岸の中村市具同と室戸市奥郷で採取した堆積物試料の花粉分析と炭化片分析を行い,当地域における完新世の植生と火災撹乱の変遷について調べた.主な成果は次に示す通りである.1)剣山地天狗塚では,少なくとも過去1,000yrsBPの間はササ草原が優勢であった.2)剣山地夫婦池付近では,約700yrsBP以降,ブナ-ツガ林の一部が二次林や草原に移行した.周辺域における600yrsBP頃のソバの栽培も確認された.3)火災撹乱は少なくとも鬼界-アカホヤテフラ降灰期以前に太平洋沿岸で頻発し,山間地に向かって進行したことが示唆された. (2)塩塚高原に生育する草原生絶滅危倶植物モリアザミ,ヒメヒゴタイ,ヤナギタンポポ,カセンソウ,オオバギボウシ,ヒメユリ,および草原において広域分布するハバヤマボクチ,シコクアザミの種子発芽・休眠特性および成長特性を実験で明らかにした。これら8種の発芽可能時期や発芽特性は比較的類似していたが,実生の成長特性は少しずつ異なり,それが草原における生育地の違いを反映していると考えられた。草原の管理形態もこれらの個体群の消長に大きく影響していると考えられた。 (3)落合峠における代表的な数種の草原生植物の分布特性と生育環境条件との関係解明を試みた.調査対象とした草原生植物について、生育箇所における光環境条件との関連性を検討した結果、数種の草原生植物は、光要求性を反映する3グループに類型化された。マツムシソウを生育環境復元指標種と位置づけ詳細な検討を行った結果、踏圧の影響を受ける散策路周辺、崩壊地周辺等の土地安定性が確保された条件下等、光環境の阻害要因となるミヤマクマザサの繁茂が抑制される地点に分布する傾向が確認された。これらの結果を踏まえ、草原生植物の生育地復元適地選定に係わる検討フローを整理した。
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