研究概要 |
堆積物試料の花粉分析,炭化片分析,植物珪酸体分析により,以下のことが判明した.1)石鎚山地瓶ヶ森周辺と剣山地天狗塚では,過去1,000yrsの間はササ草原が優勢だった.2)石鎚山地神鳴池周辺のササ草原の成立時期は約1,400yrs BPに遡る.3)剣山地夫婦池付近では,約700yrs BP以降,ブナ-ツガ林の一部が二次林や草原に移行した.600yrs BP頃のソバの栽培も確認された.4)剣山地落合峠では,約600yrs BP以降,ブナ-ツガ林が草原化した可能性がある.5)火災撹乱は鬼界-アカホヤテフラ降灰期以前に太平洋沿岸で頻発し,山間地に向かって進行した. 現在も管理が継続されている塩塚高原では191種の草原生植物種が確認された.そのうち27種が徳島県の,25種が愛媛県の絶滅危惧種に指定されていた.植生構造は春季には多様な群落が点在するが,秋季にかけてススキ群落へと置き換わる.春季の多様な群落型の成立には,火入れ管理の不均一性や秋の刈り取り管理が影響していた.塩塚高原と他の放棄草地2地域の植物相を比較したところ,草原生植物種の割合が放棄草地で小さいことが判明した.また,休眠型組成において,放棄草地では1年生草本,2年生草本の割合が塩塚高原に比べて小さく,遷移の進行によって植物相が変化していた. 管理が放棄された落合峠では樹林化が顕著であり,2030年には15ha程度にまで草地面積が減少すると予測された.希少種の生育適地評価地図は,地形指数,南風の風当たり指数,北風の風当たり指数から作成可能であった.マツムシソウを指標種として検討を行った結果,崩壊地周辺,踏圧の影響を受ける散策路周辺等,光環境の阻害要因となるミヤマクマザサの繁茂が抑制される地点で生育可能であることが確認された. ワークショップ等をとおして,これら結果を住民に提示し,草地復元の可能性を協議した.
|