研究概要 |
マイクロバブル(超微細気泡)を圧壊させて常温常圧の環境下で大量のフリーラジカルを生成することに成功した。フリーラジカルの測定には、DMPOをスピントラップ剤として、ESR(電子線スピン共鳴法)を利用して行った。その結果、気泡として酸素を利用した場合には・OHラジカルを、また窒素をマイクロバブルとして供給して圧壊させた場合には窒素系のラジカルを生成することを認めた。その発生効率は、例えば超音波を利用した場合に比べて2〜3桁程度優れたものであった。 また、有機系排水処理を行う上での実規模試験を実施した。実験を行ったのは魚肉加工工場からの排水であり、原水のCODが2,000mg/l以上あり、一日の排出量が200t以上であったものを、オゾンを含有したマイクロバブルを圧壊させることにより、有機系成分をほぼ完全に分解することができた。圧壊手法としては流体工学的な作用の中で行う手法を新たに開発したため、使用する動力量も僅かなものであり、また圧壊手法を利用しているため相当有機物の分解に必要なオゾン量の約1/10程度で完全分解が可能であった。排出時の水質はCODが10mg/l程度、電気伝導度も2μS/cm以下であるため、中水としてトイレの清浄水などに利用可能であり、水資源の有効利用にも役立てることができる。 さらに、圧壊を行う過程でナノバブルの生成に成功した。これは原水中に1%程度の塩分濃度が存在した場合に、圧壊後の水の中に極めて微細な気相として存在するものである。気泡径は100〜200nm程度であり、特徴として長期に安定していることが確認された。オゾンをナノバブル化した場合には2ヶ月以上、製造時のオゾン濃度を保持しているため、除菌や感染症予防などに利用できる可能性が高い。従来の方法は化学的な手法によるものが主体であったが、オゾンによる物理的な除菌であり、また分解後には酸素に変わるため安全性の高い殺菌法として食品加工や医療現場などでの利用が期待できる。 研究成果はJournal of Chemical Physicsなどに投稿するとともに、実用化を念頭に置いていくつかの特許出願を行った。
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