トリテルペン生産植物からトリテルペン合成酵素のクローニングを行った。その結果、セイヨウタンポポからアキレオール合成酵素のクローニングに成功した。アキレオール合成酵素は他の植物からクローニングされたβ-アミリン合成酵素と高いアミノ酸配列相同性をもち、系統樹解析ではβ-アミリン合成酵素の分枝に含まれた。しなしながら、生成物として5環性ではなく1環性の生成物を与えたことは極めて興味深い。そこで、配列を詳細に比較したところ、酵素活性部位に存在するDCTAE配列の2アミノ酸上流に存在し、多くのトリテルペン合成酵素に保存されているバリン残基が、アキレオール合成酵素ではグリシンになっていることが判明した。そこで、このグリシンをバリンに変換した変異タンパクを酵母で発現させたところ、生成物はアキレオールからβ-アミリンに変化した。このことから、今回得られたクローンはβ-アミリン合成酵素からアキレオール合成酵素進化したものと考えられる。他のキク科植物からアキレオールの単離の報告はあるが、セイヨウタンポポからの単離の報告はなく、今回の結果は、機能ゲノム学的アプローチによる新規化合物の単離と捉えることができると考えられる。トリテルペン合成酵素に加えてトリテルペン水酸化酵素のクローニングも行った。トリテルペンの水酸化酵素はチトクロームP450型の酵素タンパクであると仮定し、ダイズESTデータベースに存在するクローンを酵母で発現させ、その機能を検討した。ダイズの芽生えにはソヤソポニンが大量に含まれることから、ダイズにはβ-アミリンの22位及び24位水酸化酵素が存在すると考え、β-アミリンを基質として酵素活性を調べたところ、CYP93E1に微妙ながらβ-アミリンに対する水酸化活性が検出された。
|