研究概要 |
本研究の第1次リード化合物となるmicrophylloneの大量分取し、種々の誘導体(メチルエーテル、脂肪酸エステル、酸化体、還元体、C-アルキル化体など)に誘導した。これらの化合物は、ラット由来の白血病好塩基球RBL-2H3用いるヒスタミン有利抑制テストを行い、脱顆粒抑制活性を測定した。その結果、モノメチル化体に活性が認められたものの、microphylloneと比較するとその活性は減弱しており、他の誘導体については活性が認められない、あるいは細胞障害性が強く活性の測定にはいたらなかった。一方、1,4-benzquinone誘導体16種について、RBL-2H3用いてヒスタミン有利抑制活性を測定したところ、そのうち5種の化合物にはmicrophylloneと同等あるいはそれ以上のヒスタミン有利抑制活性が認められた。Microphylloneについて、RBL-2H3細胞を用いてカルシウム蛍光剤を利用した細胞内カルシウムの動態を観察したところ、IC50値付近では細胞内カルシウム小胞からのカルシウムの遊離は阻害せず一過性のカルシウム濃度の上昇が認められたが、それに引き続いて発生する細胞外カルシウムの細胞内への流入は完全に阻害していた。また、80μMでは細胞カルシウム小胞からのカルシウムの遊離も完全に抑制した。同様の結果はカルシウムの放射性同位体を用いた実験でも得られた。以上の結果から、microphylloneの抗アレルギー作用は、主として細胞膜におけるCRACチャネルの阻害によるものであることが示唆された。他の活性の認められた化合物についても、細胞内カルシウム動態を観察したところ、全ての化合物でCRACチャネルの阻害が観察された。さらに、microphylloneやその化学誘導体について、マウス正常好酸球を用いてeosinophyl peroxidase活性測定による脱顆粒、マトリジェルを用いた遊走活性、好酸球を介した殺腫瘍細胞効果などについて検討を行ったところ、数種の化合物に脱顆粒抑制活性と遊走阻止活性が認められたことから、本系統化合物の抗アレルギー薬としての可能性が確認されたのみならず、抗がん剤への可能性も示唆された。
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