研究概要 |
がん抑制遺伝子p53の変異は、ヒト悪性腫瘍で最も多く認められる異常であり、がん遺伝子治療の最も重要なターゲットのひとつとなっている。本研究の目的は、正常型p53の立体構造と機能を保持したままで、悪性腫瘍中の変異型p53とヘテロ四量体を形成しない遺伝子治療用の改良型p53を設計、開発することである。 本年度は、引き続き改良型p53四量体の初期配列の設計のための四量体形成ペプチドのスクリーニングを実施した。ヒトp53四量体形成ドメインの二量体間の相互作用に関わる主要な4個の疎水性アミノ酸残基(Met340、Leu344、Leu348、Leu350)をそれぞれ7種の疎水性アミノ酸Trp、Tyr、Phe、Met、Leu、Ile、Valでランダム化したペプチドライブラリー(Lib-4)を用いて得られたフラクションのうち、天然型四量体ペプチドと同一のCDスペクトルを示し、さらに天然型四量体ペプチドとはヘテロオリゴマーを形成しないフラクションについて、アミノ酸分析およびペプチド配列解析を実施した。その結果、340位はMet, Tyrが、344位はPhe, Ile、348位はPhe, Ile, Leu、350位はVal, Trpの含量が有為に増加していることが示された。 引き続き、スクリーニングしたフラクションより得られた情報を基にした二次ライブラリーの設計と合成を実施した。二次ライブラリーは、340位(Met, Tyr)、344位(Phe, Ile)、348位(Phe, Ile, Leu)、350位(Val, Trp)の配列をもつ24種のペプチドを含むものである。このライブラリーを合成した後、非変性条件下ゲルろ過クロマトグラフィーにより、四量体フラクションを分画した。このフラクションは、天然型四量体ペプチドと同一のCDスペクトルを示した。
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