研究概要 |
我々は、非天然アミノ酸をペプチドに導入し、ペプチドのコンフォーメーションを制御することによって、特定の高次構造をもつ人工蛋白質の開発を目指している。本研究では、金属配位性のビピリジン骨格を有する非天然アミノ酸として、5'-アミノ-2,2'-ビピリジル-5-カルボン酸を複数個導入したペプチドを合成し、これらのペプチドが金属イオンと結合することにより形成する人工構造モチーフを明らかにし、さらにその構造制御因子を検討することによって、新規な高次構造・機能を有する人工蛋白質の設計・合成を行う。特に、中心金属としてルテニウム(II)イオンを用いると、人工蛋白質のコア錯体はルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体となり、様々な光化学特性を示すことが期待される。本年度は、モデル錯体として合成した2,2'-ビピリジンの5,5'-位にアミド基を有するルテニウム錯体の発光特性が、接続するアミド基の向きによって異なる原因として、カルボン酸アミド(-C(O)NHR)の励起状態寿命が温度依存性を示さないことを見出した。また、これらの錯体が対アニオンの変化によって発光挙動を変化させるアニオンセンサーとして利用しうること、この現象が酸素へのエネルギー移動消光における拡散定数が対イオンの種類によって異なることを初めて見出した。非天然アミノ酸ならびに導入ペプチドについては非対称二座配位子であるため、六配位八面体錯体にはfac/merという二種類の異性体が存在する。導入する置換基がこれらの生成比に及ぼす効果を調べるために、非天然アミノ酸誘導体ならびに導入ペプチドのルテニウム(II)及び鉄(II)錯体を系統的に合成し、その異性体生成比について検討した。また、5'-アミノ-2,2'-ビピリジル-5-カルボン酸誘導体のルテニウムトリス(ビピリジン)型錯体を初めて合成し、そのfac/mer-錯体の合成・分離に成功した。
|