研究概要 |
1.分泌系で構造形成に失敗したものは、小胞体に繋留される。この過程には、細胞毒性の強い凝集体を細胞外に排出しないというよく知られた目的だけではなく、凝集体の形成をできる限り押さえて環境が許せばfoldingできるような構造を維持する、という機構も含まれる。チロシナーゼ構造形成の温度感受性を利用して、そのfolding過程の解析を蛍光相関分光法による単分子レベルで行うことにより、この機構には新生分子のブラウン運動レベルでの抑制も含まれることを明らかにした。このランダムな動きの抑制は、蛍光消光を利用したFRAPでは検出されず、新たなダイナミクスの制御機構と考えられる。(投稿中) 2.正しい構造形成ができない糖タンパク質の分解を促進する因子としてEDEMを報告してきた。その作用は、Mannose8Bを特異的に認識すると考えられるが、品質管理全体での役割は明らかではなかった。今回、EDEMはcalnexinとそれぞれの膜貫通部を介して結合することを様々なキメラ蛋白やin vitroでの実験によって証明し、ついでカルネキシンとの関連をkineticalに解析すると、カルネキシンとの相互作用が解消されない蛋白(α1アンチトリプシンNullHongKong変異体)をEDEMが受け取って、プロテアーゼによる分解系につなげることを報告した。(Science,299,1394) 3.calnexinのレクチンドメインと膜貫通部を欠損した分子は嚢胞性繊維症の主な分子病因F508の小胞体への繋留を緩和することを報じた。(FEBS Lett526,87) 4.ゴルジ体においてプロドメインの切断を行うPACE4Aのautocatalyticな活性化にC端側の領域が重要であることを報じた。(BBRC290:878)
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