近年、新規な機能を有するヘムタンパク質として、気体分子センサーとして機能するヘムタンパク質が注目を集めている。本研究では、酸素センサーとして機能するHemAT、一酸化炭素センサーとして機能するCooAを対象として、これら気体分子センサータンパク質の構造と機能の解明を目的として研究を行った。枯草菌中に含まれ、本菌の酸素に対する走化性制御系において酸素センサーとして機能するシグナルトランスデューサータンパク質であるHemATは、酸素センサーの本体として機能するプロトヘムを有していることが分かった。本研究では、遺伝子工学的手法と各種分光学的手法を駆使することにより、センサー活性中しとして機能するヘムの近傍構造の解明を行った。その結果、ヘム配位した酸素分子に対し、ヘムポケットに存在するThr95およびTyr70が特異な水素結合ネットワークを形成しており、このことが酸素の選択的センシングに関与していることを明らかにした。 一酸化炭素センサーCooAに関しては、CO酸化細菌C.hydrogenoformans中に、新規なCooAホモログを発見し、その発現系を構築し、精製方法を確立した。新規に発見したCooAホモログ中に含まれるプロトヘムは、酸化型、還元型、CO型いずれの場合も6配位低スピン状態であることを見い出した。また、本CooAホモログでは、従来のCooAで観測されたCysとHis間での軸配位子交換反応は進行しないことを明らかにした。本ホモログの分光学的な性質に関しても検討し、これまでの結果と総合することにより、CooAによるCOセンシングに必須の要件を明らかにした。
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