研究課題/領域番号 |
14380310
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研究機関 | (財)東京都医学研究機構 |
研究代表者 |
金保 安則 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所・参事研究員(部長) (00214437)
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研究分担者 |
佐々木 雄彦 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 主任研究員 (50333365)
前濱 朝彦 財団法人東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (40322755)
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キーワード | ホスホリパーゼD / 小脳顆粒細胞 / 軸索伸長 / 神経細胞接着分子 / ERK / 一級アルコール |
研究概要 |
本研究では、近年シグナル伝達酵素として注目を集めているホスホリパーゼD2(PLD2)の活性調節機構と神経細胞における生理機能について解析し、その結果、以下の成果が得られた。 (1)小脳顆粒細胞の軸索伸長におけるPLD2の役割 現在までに同定されているPLD1とPLD2の2種のPLDアイソザイムのうち、PLD2のみがマウス小脳に発現しており、PLD2の発現はマウス小脳顆粒細胞においても認められた。また、マウスから調製した初代培養小脳顆粒細胞において、神経細胞接着分子L1刺激により促進される軸索伸長は、PLDが触媒する加水分解反応を阻害する一級アルコール(エタノールと1-ブタノール)により抑制された。さらに、小脳顆粒細胞をL1刺激するとERKとともにPLDも活性化され、これらの活性化は共にMEK阻害剤のU0126により阻害された。これらの結果から、小脳顆粒細胞のL1を介するシグナル伝達において、PLD2はERKの下流で機能して軸索伸長の促進に重要な役割を果たすことが示唆された。 (2)PLD2の活性化機構の解析 PLD2は、in vitroでホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸により活性化されることは知られているものの、生理的な活性調節機構についてはほとんど解明されていない。興味深いことに、上記の小脳顆粒細胞での結果は、PLD2がERKにより直接あるいは間接的に活性化されることを示唆する知見であり、この点についての解析を行った。HeLa細胞に過剰発現させたERKをH_2O_2刺激して活性化させた後に抗ERK抗体で部分精製し、この活性型ERKとリコンビナントPLD2を再構成したが、PLD2の活性化は認められなかった。このことより、PLD2はERKにより制御される未同定分子により間接的に活性化されることが示唆された。 次年度は、このERK依存的にPLD2を活性化する因子を精製して、それを同定する予定である。
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