研究概要 |
本研究の目的は,ATPの加水分解の自由エネルギーを,ADPやリン酸を共存させることによって調節したうえでF_1-ATPaseの回転運動を精密に測定し,一分子でのエネルギー変換を理解することである.従来はF_1-ATPaseのADPによる特異的阻害が大きな問題であったが,その点に関しては阻害を受けにくい変異体をすでに作成していたので平成14年度は,回転の精密な測定のための顕微鏡装置のセットアップと予備的な実験を行った. まず,オリンパス(株)のIX-71顕微鏡をベースに,安定性強化ステージを取り付け温度変化に起因していると考えられるピントのずれを押さえるとともに,従来のステージに比べて操作性を大幅に向上させた.また,フルフレームシャッタカメラと,高精度画像処理ボードを搭載したコンピューターで画像を取り込み,デジタルビデオカセットレコーダーで記録するシステムを構築した. そして,時間分解能を高めるためにナック(株)のHi-Dcam II PCIモデルを用い,現在,1msの時間分解能で画像を記録できるようになっている.この時間分解能は光源を強化することでさらに上げることが可能である. また,これらの画像解析の効率を上げるために,岡崎国立共同研究機構・統合バイオセンターの足立氏作成の画像解析ソフトを導入させていただくとともに,Origin 6.0のマクロスクリプトを作成し,作業の効率を大幅に高めることができた. 以上の装置の改良を行った上で,F_1-ATPaseの回転運動をATP, ADP, Pi共存下で測定した.その結果,ATPの加水分解の自由エネルギーは個々の回転のステップの立ち上がりには影響せず,ステップの間隔に影響するという結果が得られつつある.
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