研究課題
生物が持つ水素の代謝能力の本質はヒドロゲナーゼという金属タンパク質である。ヒドロゲナーゼは水素の酸化・還元を触媒する機能を持つ。従って本酵素の工業的利用の可能性を探る研究は新規燃料電池の開発や石油に変わるクリーンエネルギー生成の道を拓くことにつながると期待できる。活性部位にNiおよびFeを持つ[NiFe]ヒドロゲナーゼはこれまでに多くの菌株について分光学的および結晶学的な構造化学的研究がなされ、金属活性部位周辺で起こる触媒反応についていろいろな奇妙な現象が報告されている。本研究では、Desulfovibrio vulgaris Miyazaki株由来の酵素について酸化型・還元型の構造化学をさらに進めた。平成16年度は、ヒドロゲナーゼの酸化型が活性化されていく過程において活性部位の構造がどのように変化していくのかを調べた。通常、菌体から抽出して得られた酵素分子(酸化型酵素)はNi-A型という不活性-安定型分子とNi-B型という活性準備-不安定型の混合物である。本研究では、上記、Ni-A型とNi-B型の混合物の酵素溶液に50mMのNa_2Sを加えた後、それを空気に暴露することにより、純粋なNi-A型のみからなる酵素溶液を調製することに成功した。この過程におけるNi原子の電子状態の変化をEPR法により調べたところ、Na_2S添加後、空気に暴露する前にNi-A型とNi-B型の中間体を経ていることが明らかになった。また、このとき、酵素中の電子伝達ユニットである3個のFe-Sクラスターのうち、Fe_3S_4のクラスターのみが酸化-還元を繰り返していることがわかった。これは、Ni-Feの酵素活性部位において「Na_2S」と「O_2」による酸化-還元作用の繰り返しによりNi-Aが生成されていくことを示唆しており、本活性部位の反応機構を知る上で重要な知見であると考えられる。今後は、Ni-A型とNi-B型のそれぞれについて結晶化および結晶構造解析を行い、本活性部位の活性化機構を完全に解明していく予定である。
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