研究概要 |
分子量7000万の二重殻ウイルスの一種である,イネ萎縮ウイルス(RDV)の全立体構造決定のために,X線結晶構造解析および低温電子顕微鏡を用いた構造解析を進めた.構造決定のアプローチには,3つの方法を用いた.1つめは,ウイルス粒子の結晶を用いた構造解析である.これまでに,3.5Å分解能の回折強度データを用い,低温電子顕微鏡の低分解能像を用いた分子置換平均化法による位相改良・拡張により得られた電子密度図に基づいて,2重殻の構造を原子レベルで明らかにしているが,さらにその内側,正二重面体の5回軸近くに,RNA結合タンパク質と考えられているP7の構造の一部を同定した.また.5回軸付近には.P7の残りの領域およびRNAポリメラーゼであるP1と思われる電子密度が現れている.しかし,原子構造を明らかにできるものではなく,また,分解能を拡張するに従って,この領域の電子密度は弱くなってしまった.2つめのアプローチは,低温電子顕微鏡による低分解能の構造解析である.低温電子顕微鏡では,5回軸周りにはっきりとしたタンパク質サブユニットと考えられる電子密度,および,殻構造を形成しているRNAの構造に由来する電子密度が得られている.X線による構造と比較することにより,5回軸周りに存在する転写複合体およびRNAの液晶構造が明らかになってきた.3つめのアプローチとしては,各タンパクサブユニットを大量発現させ,単体での構造解析を進めた.RNAポリメラーゼであるP1およびキャッピング酵素であるP5の大量発現系を構築し,タンパク質の発現を確認したが,現時点ではサンプルの大量調製および結晶化に成功していない.
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