研究概要 |
1.トランス翻訳の分子機構に関して: 1)大腸菌においてトランス翻訳に必須の因子SmpBは、細胞内でtmRNAと結合し、(1)その安定化に働く、(2)tmRNAのアミノ酸結合能を高める、(3)リボソームへの結合を助ける、という複数の機能をもつ事を明らかにした。(Hanawa-Suetsugu et al.,2002) 2)枯草菌tmRNAは大腸菌中でも正常にトランス翻訳反応を行うことを、その産物のマススペクトル解析を用いて明らかにし、両者の細胞中で同一のメカニズムでタグ合成が起きることを明らかにした。(Ito et al.,2002)。 2.トランス翻訳の生理的機能に関して: 1)枯草菌においてトランス翻訳反応産物を検出する系を確立した。それにより、高温ストレス下ではより頻繁にトランス翻訳が起きることが確認された。また培養条件により反応の標的となるタンパク質の種類が変わることが判明、さらに高温と常温とで標的となるタンパク質の種類を数個づつ同定した。(Fujihara et al.,2002)。 2)枯草菌においてtmRNAの欠損はその胞子形成能を有意に低下させることが見つかった。その詳細を解析したところ、欠損株では胞子形成過程のステージIII(forsporeのengulfment形成)以後の進行が阻害されており、胞子コートタンパクの合成に必要なシグマK転写因子の活性が顕著に低下する事が明かとなった。その原因について解析中である。
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