研究概要 |
本年度は最終年度にあたり、ウェルナー症候群、ブルーム症候群の原因遺伝子WRN, BLMの機能をニワトリDT40細胞株を用いて系統的に解析した。また出芽酵母のWRN/BLMの相同遺伝子SGS1を解析し新たな知見を得た。その成果を以下に箇条書きにする。 (1)DT40 blm,atm,blm/atmの解析から、DNA傷害によりATMがBLMをリン酸化するという報告が複数なされているのも関わらず、両者の間にほとんど遺伝学的な相互作用がないことを高等脊椎動物細胞で立証した(王らBiochim.Biophys.Acta.2004)。 (2)ファンコニー貧血症(FANC)とブルーム症候群は従来全く関連のない疾病と考えられていたが、近年FANC複合体とBLMが相互作用することが示された。そこでFANCCとBLMの関係をDT40細胞を用いて解析し、両者の間に密接な関係があることを見いだした(平野らEMBO J.2005)。 (3)DT40 wrn/xrcc3,wrn/blm,blm/xrcc3,wrn/blm/xrcc3株の解析から、BLMはXRCC3の関わる相同組換え経路で働き、WRNはXRCC3とは異なる機能を持つことを立証した(発表準備中)。 (4)出芽酵母Sgs1およびTop3の機能を解析し、Sgs1のDNA傷害時における相同組換え修復誘導能はSgs1と相互作用するTop3に依存することを証明した(宇井DNA Repair 2005)。さらに高等動物細胞でBLMとMSH2が相互作用することが報告されている。その関係を調べるために出芽酵母sgs1/msh2二重変異株を解析したところ、sgs1の欠損で現れる表現型の一部がMsh2の機能に依存することを示した(小野田DNA Repair,2004)。
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