研究課題
出芽酵母形態形成の中心因子であるRho1pは真核生物に広く保存された低分子量GTPaseであり、上流からのシグナルに応答して活性化型(GTP結合型)または不活性化型(GDP結合型)に変換され、下流へのシグナルのオン・オフを切り替える分子スイッチとして機能する。Rho1pの5つの標的タンパク質はいずれも直接的または間接的に細胞形態形成に関与しており、これらの標的タンパク質が制御する事象の中には細胞周期の時期特異的な調節を受けるものがあることが知られていたが、Rho1pそれ自体の活性化と細胞周期との関連については報告がなかった。そこで、本研究では細胞周期依存的なRho1p活性制御におけるシグナル伝達経路に着目し、出芽酵母形態形成メカニズムの一端を明らかにすることを目指した。Rho1p活性化の細胞周期時期特異性ならびにG1/S期におけるRho1p活性化機構を調べたところ、まず、出芽時であるG1/S期に活性化型Rho1p量のピークが存在することがわかった。出芽酵母の細胞周期は細胞周期を通じて一定量存在するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)Cdc28pと、時期特異的に発現する九つのサイクリンとの複合体によって制御されるため、それぞれのサイクリンが活性化型Rho1p量に及ぼす影響を検討したところ、G1/S期のサイクリンをコードするCLN2の過剰発現により活性化型Rho1pが増加することがわかった。さらに、M期サイクリンをコードするCLB2を破壊した細胞で活性化型Rho1pが顕著に増加した。以上より活性化型Rho1pはG1/S期にCln2p/Cdc28p依存的に増加し、Clb2p/Cdc28p依存的に減少し、細胞質分裂期に再び増加すると考えられた。以上の研究からRho1pは細胞周期の各ステージにおいて特異的な活性制御を受け、細胞形態形成の主要な制御因子として機能することが明らかになった。
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