研究概要 |
核外輸送におけるmRNAの自己同一性を規定する信号配列を探索する目的で、キイロショウジョウバエのfushitarazu遺伝子のイントロンを別種のRNAであるU1snRNAに挿入したところ、スプライシングを受けたU1snRNAの核外輸送経路がUsnRNAの核外輸送因子のひとつであるCRM1に依存しなくなることを、アフリカツメガエルの卵母細胞への微量注入の系を用いて発見した。続いて、既知のUsnRNA核外輸送因子(PHAX, RanGTP)やmRNA核外輸送因子(TAP)の要求性を調べることにより、スプライシングを受けたU1snRNAの核外輸送経路がmRNAのそれに切り替わることを証明した。しかも、スプライシングを受けて細胞質に輸送されたU1snRNAは、通常のUsnRNAがたどるべき運命である「核への逆輸送」が阻害されるという事が分かった。U1RNAの「核への逆輸送」のどのステップが阻害されているのかを次に調べた結果、RNA逆輸送の前提条件であるSm蛋白質のRNAへの結合や、それに続くキャップ構造の過剰メチル化は正常に起こっている事が分かった。さらに、逆輸送の過程で過剰メチル化されたキャップ構造に特異的に結合する輸送因子であるSnurportinlも正常に結合している事も示唆された。これらの結果より、逆輸送の阻軍は輸送メカニズムの不具合であるとは考えがたい。むしろU1RNAが細胞質に係留されてしまっている事が原因である事が強く示唆された。 以上の結果は、mRNA型のイントロンがmRNAの核外輸送における身分証明書的特徴(ID)として機能していること、さらに、一旦付加されたIDはRNAが細胞質に輸送された後も生きていて、RNAの運命に影響を与えることを意味しており、mRNAの身分証明過程の重要な一端が明らかになった。
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