研究課題
基盤研究(B)
真核生物の複製時のDNA鎖伸長反応には、クランプとクランプローダーとして機能する複製因子、PCNAとRFCのセットが必須である。これまでにRad9-1-1複合体、Rad17、Chl12、Mgs1など、PCNAやRFCに類縁の因子が見つかり、これらも新規のクランプ、クランプローダーとして機能し、複製を起点とする多様なDNA代謝経路の連係の中心的役割を持つことが予想された。そこでヒト由来のこれらの因子について、機能と構造の関係を明らかにし、染色体複製時に、複数のクランプ・クランプローダーが連係して構築するゲノム構造の恒常性維持のための情報ネットワークの全容解明を目的として研究を行った。3年間の本研究の進行により、チェックポイント応答系および染色体接着系の新規クランプおよびクランプローダー複合体の再構築が行われ、これらが新たなクランプ・ローダー系としてふるまうことを明らかにした。さらに染色体接着系クランプローダー複合体の標的クランプが複製系クランプでもあるPCNAであることを明らかにした。またアミノ酸配列がRFCと高い類似性を持つヒトMgs1(WRNヘリカーゼ結合因子1:WRNIP1)の解析を行った結果、ローダー型複合体とはならず、ホモ8量体と思われる複合体を形成することを明らかにし、さらにこれが新規のDNAポリメラーゼδの機能制御を行うATPaseであることを明らかにした。これらの新しい知見を基にすると、PCNAおよびRFCとその類縁因子の染色体複製とその機能維持における役割は、予想以上の広がりを持ち、複製、特に複製フォーク進行時には、多様なDNA代謝酵素、DNA合成酵素が複数のクランプ・ローダー系を起点として機能的に連係することが、正確な複製、染色体分配に重要であることが明らかとなった。
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