研究課題
ショウジョウバエの1本の味覚感覚子の基部には通常4個の味細胞がある。それぞれの味細胞は、糖、低濃度の塩、高濃度の塩や苦味物質、水のいずれかに応答する。味細胞の軸索は、唇弁からは脳の食道下神経節に、フ節や翅からは胸部神経節に直接伸びている。特定の味細胞の機能を調べ、投射パターンを同定するため、Gal4エンハンサートラップ法、GAL4/UAS系を用いた。これらの手法を用いることで、特定の細胞をラベルし、その細胞で任意の遺伝子を発現させることができる。特定の味細胞でGAL4が発現しているGal4エンハンサートラップ系統をスクリーニングし、唇弁の感覚子に接続する1個の味細胞でGAL4が発現しているNP1017系統を得た。GAL4発現細胞の機能を調べるため、シナプス小胞のリサイクルに重要な遺伝子であるshibireの変異体や神経毒素をコードするTNT、細胞死遺伝子であるreaperをGAL4/UAS系を用いGAL4発現細胞において発現させた。GAL4発現細胞の機能阻害により生じる味覚応答の変化を、吻伸展反射テスト、電気生理学的解析により調べた結果、NP1017系統の唇弁でのGAL4発現細胞は水受容細胞であることがわかった。モザイク法を用いて、単一あるいは数個の水受容細胞でGFPを発現させ、中枢への投射パターンを観察したところ、唇弁にあるどの味覚感覚子に接続する水受容細胞であっても、食道下神経節の同じ領域に投射していた。水受容細胞とは異なる味細胞でGAL4が発現しているGr32a-Gal4の投射パターンとを比較したところ、両者の投射パターンは異なっていた。これらの結果から、異なる味覚情報が、中枢の異なる領域に伝えられることがわかった。
すべて 2004
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