研究概要 |
染色体複製には、1細胞周期において、特異的な時期に、ただ1回だけ起こるという原則がある。最近、大腸菌染色体DNA複製の制御機構には、新規タンパク質Hdaが直接必要とされることを見出した(EMBO J.,2001)。そこで本計画では、細胞周期におけるHda機能制御の分子機構を攻究することを第1の目的とした。また、複製開始スイッチをONにする分子機構解析のため、DnaA活性化システムの解明を第2の目的としている。研究実施計画に沿って、まず、部位特異的変異解析法によってHdaタンパク質の機能構造解析を進めた。その結果、このタンパク質は、タンパク質-タンパク質相互作用ドメイン(βドメイン)とATP加水分解制御ドメイン(AAA^+ドメイン)の2つのドメインからなることが判明した。Hdaタンパク質は、複製開始因子DnaAと相互作用し、DnaA結合性ATPの加水分解を進め、ADP結合型DnaAタンパク質を産生する。さらにこの際、DNAポリメラーゼIIIβサブユニットの共存が必要である。Hdaタンパク質は、そのβドメインによって、DNAポリメラーゼIIIβサブユニットを認識し、AAA^+ドメインによってDnaA結合性ATPの加水分解を進めると思われる。AAA^+ドメイン内でATP加水分解に必要な部位をアミノ酸レベルで同定した。ADP結合型DnaAタンパク質は、複製開始能不活性型であるので、過剰な複製開始反応を抑制する機能があるが、細胞周期中、次の複製開始時にはATP結合型に変換される必要があると思われる。すでに、試験管内ではヌクレオチド交換反応によってこのようなDnaA再活性化を促す因子を同定している。この因子が細胞内でも、ADP結合型DnaAをATP型に変換する機能があることを見出した。現在、この変換反応の制御因子を新たに探索している。以上の成果により、DnaA機能の制御スイッチとなる因子の機能構造特性が明らかになってきた。
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