造血微小環境がいかにして形成、維持されるかを解明するため、骨髄から間質細胞株を多数樹立し、これら間質細胞を用いて、血液幹細胞を維持できる造血微小環境を培養系で再構成し、これら間質細胞依存に増殖・維持される未分化な血液幹細胞株を樹立した。 この造血微小環境を構成する骨髄間質細胞の特性を検討し、間質細胞が、筋細胞、骨芽細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、心筋などへと分化誘導される間葉系幹細胞または前駆細胞であることを示した。そして、血液細胞が産生するオンコスタチンMが、間質細胞の造血支持機能を促進するとともに、間葉系細胞分化の制御もすることから、造血細胞と間質細胞の双方向の細胞間相互作用により互いを制御することにより造血微小環境を恒常的に維持していると予想された。これら間葉系幹細胞株2株について、分化誘導時に共通に発現変換する遺伝子をマイクロアレイ法により解析した結果、共通に抑制を受ける遺伝子は20種程度であり、エピジェネテイックな制御に関わると思われる遺伝子群が大半を占めた。また、誘導される遺伝子群は間葉系細胞の分化特異的遺伝子群と特徴的な転写因子群であった。 造血支持機能の強い間質細胞に高い発現が認められる遺伝子としてDifferential Display法により新規遺伝子を単離した。この遺伝子は蛋白相互作用に関与するPDZドメインをもつ新規のミオシン遺伝子(MysPDZ=Myo18A)であり、このドメインに依存した細胞内顆粒および細胞膜直下の局在、細胞内の移動や細胞内輸送に関与する事が予想される結果が得られており、間質細胞の支持機能との関係に興味がもたれる。MysPDZは、間質細胞とは異なり、PDZドメインを欠く血球、筋肉細胞、神経細胞に特異的な3種のアイソフォームが存在する事が分かり、その組織特異的な機能について興味が持たれる。
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