分裂酵母の胞子形成は高等多細胞生物の配偶子形成過程に相当し、減数分裂を伴う細胞形態形成のモデルとなる。将来、胞子の細胞膜に分化する前胞子膜は第二減数分裂から形成され始める。減数分裂と前胞子膜形成のカップリング機構、特に第一分裂で前胞子膜形成開始が抑制される機構を解明するため、本年度は分子遺伝学的な解析により関連する遺伝子を同定することを目標に研究を進め、次の成果を得た。 1)第一分裂時に前胞子膜が形成される突然変異株gis (gigantic spores)の単離と遺伝解析:大きな2胞子を作る突然変異株を7株単離し、遺伝解析した結果、4つの遺伝子座(gis1-gis4)に集約できた。これらの変異株の多くは温度感受性成長を示したことから、生育に必須の機能を持つことが推定された。2)gis突然変異株の減数分裂・胞子形成の観察:減数分裂の進行をDAPI染色で、前胞子膜形成をGFP-Psy1融合タンパク質を用いて調べ、野生型と異なり、第一分裂時に膜形成が始まることを明らかにした。3)gis遺伝子産物の同定:gis1-gis3変異を相補する遺伝子を各ゲノムライブラリーからクローニングした。部分決定した塩基配列とゲノム配列データベースから当該遺伝子産物を同定したところ、これらは動原体、スピンドル極体、スピンドルに局在するタンパク質であることがわかった。4)以上の結果から、前胞子膜形成が第一分裂で抑制される機構には、分裂装置の構成タンパク質が関係することが推定された。5)分裂装置と前胞子膜を同時に蛍光観察するため、GFP-Psy1(前胞子膜マーカー)、YFP-チューブリンなどの標識システムを完成した。
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