研究課題/領域番号 |
14380344
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
嶋村 健児 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (70301140)
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研究分担者 |
小林 大介 熊本大学, 発生医学研究センター, 助手 (00363507)
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キーワード | 神経上皮細胞 / 神経幹細胞 / 細胞系譜 / 遺伝子発現 / 細胞移動 / 領域特異性 / 神経核 |
研究概要 |
本研究の目的は、脊椎動物の脳組織を構成する神経細胞の細胞系譜を解析し、幹細胞である神経上皮細胞における起源を明らかにするというものである。本年度も引き続き、視床神経核を構成する特定の神経細胞に注目して解析を行った。これまでに、Sox14発現ニュ-ロンは、誕生地が視床原基の腹側境界部に厳密に規定されること、これらのニューロンはその後特徴的な移動経路を経て、視床の辺縁部に位置する神経核となることを示した。本年度は、ニワトリ-ウズラ組織を用いた器官培養系を用いて、視床原基内の様々な移植実験を行ったところ、このような移動形質はこの領域に誕生する神経細胞に限定されており、他の領域の細胞は特に方向性をもった細胞移動を示さないことを明らかにした。また、これらの神経細胞を正しい方向に導くためには、移動経路に限局した環境要因が重要であることも示された。これまでSdx14を発現する神経細胞に注目しできたが、Six3、またはNkx2.2陽性で、Sox14陽性群とは異なる集団の神経細胞も同じ部位から誕生することがわかった。これらの集団もSox14陽性群とよく似た挙動を示し、同様の経路を通って移動するが、到達地点はそれぞれ異なっていた。また、移動経路を決定する環境要因として、視床の前方境界に位置するzona limitans intrathalamica (Zli)に着目し解析を行った。Zliを構成する神経上皮細胞は、通常の放射状グリア細胞とは形態的に異なっており、軟膜でend feetを形成せず、90度方向を転換して、神経管の接戦方向に後方へ向かって伸びていることが示された。このような突起を含めたZliの細胞の形態は、神経細胞の移動経路とよく一致した。また、Zliの細胞はソニックヘジホッグを発現するが、少なくとも器官培養下では、Sox14陽性細胞、およびこの領域に由来する神経細胞は、ソニックヘジホッグに対して誘因されるという挙動を示した。以上の観察から、限局した移動経路を利用するために、神経細胞は限定された部位に発生することが必要であり、一ヵ所に由来する神経細胞であっても、移動経路に沿って異なった分布することにより、神経核の立体的配置の形成に寄与するものと考察された。以上の結果は論文にまとめ、投稿準備中である。
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