マウスの体軸の後方への伸長は、ノードと原条からなる原条領域において、より後方の組織が付加されることによりおこる。我々は、Foxa2遺伝子のノード・脊索エンハンサーのコア配列が原条領域で特異的に活性化されることを見出し、原条領域のアイデンティティ確立機構を明らかにすることを目的として、コア配列の活性化機構を解析し、次のことを明らかにした。コア配列は、Wnt/β-cateninシグナル処理したマウス奇形腫細胞P19で活性化され、その活性化には2つの転写因子が関わっている。2つの転写因子の結合配列は、Foxa2エンハンサー全長がノードと脊索で遺伝子発現を与えるためにも必須である。さらに、コア配列に作用する転写因子の1つはTeadであり、Tead-EnR発現プラスミッドのエレクトロポレーションによりノードでのTeadの活性を阻害するとノードに由来する脊索が消失する。また、ゼブラフィッシュ胚でTeadの活性を増減させるとFoxa2の発現が増減する。これらの事は、Teadがもう1つの転写因子と協調的に働くことが、Foxa2のノードにおける発現の鍵であり、Teadの働きは種間で保存されていることを示している。また、Teadは胚の広い領域で発現していることから、もう1つの因子が原条領域に限局しており、Teadはその転写因子と協調して原条領域の遺伝子発現を制御していると考えられた(投稿中)。Teadには4つの類似した遺伝子が存在するが、それらのノックアウトマウスを作成したところ、Tead1;Tead2の2重変異マウス胚において、頭部以外でのFoxa2の発現消失及び体軸の後方への伸長の異常が見られ、Tead1/2が原条領域のアイデンティティの確立に中心的なはたらきをしていることが示唆された。
|