研究概要 |
我々は、転写因子の抗体を用いて、生体内で転写因子が直接結合しているDNA配列を精製することによって、近傍に存在する標的遺伝子を同定するという方法を開発し、マウスホメオボックス型転写因子の複数の標的遺伝子を同定してきた。ノックアウトマウスを作製し、これを用いた遺伝学的解析から、これらの標的遺伝子群が実際の生体内でもホメオボックス転写因子に制御されていることを示すことが出来たことから、この方法を全ゲノムレベルに拡張することによって、哺乳類発生過程における転写ネットワークの解明が出来ると考え実験法の確立を試みた。具体的には、哺乳類と比べゲノムサイズの小さい酵母や線虫をモデル生物とし、DNAマイクロアレイ等を用いて、転写因子の全ゲノム中の結合配列の網羅的な同定を行った。その結果、酵母ではMATα2,PHO4,CRZ1等の転写因子の既知の標的遺伝子群の同定とともに、多くの未知標的候補遺伝子群を検出した。線虫においても、複数のホメオボックス転写因子の結合配列の同定を行った。その中には、eg15(線虫Hox遺伝子)の標的遺伝子としてのmab21遺伝子の同定も含まれており、これは我々がすでにマウスHox-C4遺伝子産物の標的遺伝子としてmab21l1遺伝子を同定していることから、Hox遺伝子とその標的遺伝子が、進化の過程で保存されていることを示した始めての結果である。現在上記の方法をマウスを対象とした研究に用いるための技術開発を行っている。
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