非対称細胞分裂は生物の発生の際、細胞の多様性を作り出す基本的機構である。C. elegansにおいては、多くの細胞分裂の非対称性がWntシグナル伝達によって制御されている。われわれはpostembryonicに起こるT細胞の非対称分裂に注目し、この分裂の非対称性が異常になる変異体をスクリーニングし、101種類の変異体を得た。次に、SNP (single nucleotide polymorphism)を用いて、どの染色体上に変異があるかをマップし、相補性試験を行った。その結果、これらの変異は既知の遺伝子も含め51種類の遺伝子の変異であることが示唆された。非常に多くの遺伝子が一つの細胞の非対称分裂に関与していることが明らかになった。 同定したいくつかの遺伝子について、クローニングを行い、それぞれの機能を調べた。psa-10、psa-13遺伝子はSWI/SNF複合体の構成因子であるそれぞれBAF250、BAF53のホモローグをコードしていた。また、cic-1およびcdk-8は転写Mediator複合体の構成因子であるcyclin C、CDK8をコードしていた。これらの遺伝子は、非対称分裂後、娘細胞間の非対称な遺伝子発現を制御している。また、rmd-1遺伝子は新規のcoiled-coilドメインを含んだ蛋白をコードしており、ほ乳類にも複数の機能未知の相同分子が存在することが明らかになった。rmd-1遺伝子の機能を初期胚において調べた結果、rmd-1はスピンドルの回転、細胞質分裂、細胞極性など、様々な微少管が関与する現象に必要であることが明らかになった。
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