研究概要 |
生体内の細胞において、ジアシルグリセロール(DG)は様々な脂質代謝の中間体としてのみならず、細胞内二次メッセンジャーとしても重要な役割を果たす。様々な蛋白質をリン酸化するプロテインキナーゼC(PKC)はこのDGにより活性調節を受けることから、DGキナーゼ(DGK)はこのDGの代謝を介してPKC活性をコントロールする役割を果たす。我々はこれまでラット脳より5つのDGKアイソザイム(DGKalpha,-beta,-gamma,-zeta,-iota)のクローニングを行い、脳内遺伝子発現を報告してきた。本研究では、これらDGKアイソザイムの機能的役割を追求する目的で特異抗体の作成と種々の条件下における細胞内局在の変化を検討した。 1)抗体の作成:各々のDGKアイソザイムに特異的な領域を選択しグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合蛋白質として大腸菌にて大量培養発現を行った。グルタチオンカラムによる精製後、家兎に免疫を行い現在血清から抗体を精製中である。 2)細胞内局在の変化の検討:抗体作成の成功したDGKzetaに関して、その機能的役割を検討する目的で、発達課程および脳虚血状態における局在を精査した。DGKzetaの免疫反応は、大脳皮質、海馬、および小脳の大部分の神経細胞内において核内に局在するが、生後14日齢の小脳プルキンエ細胞においては、核内には認められず、細胞質にのみ検出された。また一過性脳虚血モデルを用いた実験では、虚血に脆弱性を示す海馬CA1錐体細胞においてのみ、核から細胞質への迅速なDGKzetaの移行が認められることを見い出した。これらの所見は、DGKzetaが種々の条件下において、核と細胞質間を移行する可能性を示し、このアイソザイムの機能解析を行う重要なヒントになると考えられる。さらに脳スライスを用いた追試実験の平行して行っている。
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