Dab1欠損マウス(ヨタリマウス)の脳の細胞構築異常は、リーリン欠損マウス(リーラーマウス)の細胞構築異常と同じであるとされている。実際、Dab1はリーリンの下流に位置し、その直接的な制御を受ける。しかしリーリンはリポプロテイン受容体やカドヘリン関連神経受容体とも結合することが知られており、ヨタリとリーラーのフェノタイプが同一ではない可能性がある。本研究は、大脳皮質の層特異的神経結合の観点からリーラー、ヨタリの大脳皮質細胞構築異常を詳細に調べることを目的とした。 皮質視床路ニューロンを逆行性に標識することを目的として、正常マウス、リーラー、ヨタリの視床外側腹側核にWGA-HRPを注入した。また皮質脊髄路ニューロンを逆行性に標識することを目的として上記動物の腰髄にfree HRPを注入した。注入48時間後に、パラフォルムアルデヒドとグルタールアルデヒドの混合液で灌流後、40μmの完全連続切片を作成し、TMBを用いてPeroxidase組織化学を行った。逆行性に標識された皮質視床路ニューロンは、正常マウスでは皮質第6層に分布したが、リーラー、ヨタリともに皮質の最表層の多形細胞層に限局して分布した。一方、逆行性に標識された皮質脊髄路ニューロンは、正常マウスでは皮質第5層に限局して分布するが、リーラーでは皮質全層に、ヨタリでは皮質表層1/3に限局して分布した。皮質内分布について統計学的に検討した結果、リーラーとヨタリ間において、皮質脊髄路ニューロンの分布に有意の差を認めたが、皮質視床路ニューロンの分布については有意の差を認めなかった。 以上より、本年度は皮質第5層ニューロンの皮質内分布がリーラーとヨタリ間で異なることを証明した。リーラーとヨタリのフェノタイプが異なることより、リーリンタンパクとDab1タンパクは必ずしも線型関係ではないことが明らかとなった。
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