本年度は、SRKラットの大脳新皮質の層構造異常を神経回路標識法を用いて検討した。生後3週令のSRKラットおよび正常ラットを麻酔し、WGA-HRPを実験動物の視床外側腹側核に注入した。注入後2日間の生存期間をおいて実験動物を灌流固定した。脳を取り出し、完全連続凍結切片を作成し、TMB法にてHRP組織化学を行った。別に脳梁交連線維系と皮質脊髄路起始ニューロンを標識する目的で、実験動物の右側大脳皮質あるいは脊髄に10% free HRPを注入した。正常ラットの皮質視床路ニューロンは、ほぼ運動野の皮質最深層である6層に限局して分布していたが、ごく少数の標識ニューロンが5層にも分布していた。標識されたニューロンの形態は頂上樹状突起を軟膜側に向けた錐体型をしていた。SRKラットの皮質視床路ニューロンはその多くが軟膜直下の多形細胞層に分布していた。これらの標識ニューロンは頂上樹状突起を下方に向けた逆転型の錐体ニューロンであった。対照動物の標識脳梁交連線維系ニューロンは注入部位の反対側の運動野に分布した。標識ニューロンはI層を除いて皮質の全層に分布したが、2/3層に最も集中して分布し、5層に第2のピークが認められた。標識ニューロンの形態は頂上樹状突起を上方に向けた中型〜大型の錐体型ニューロンであった。一方、SRKラットでは皮質全層に標識ニューロンが分布し、正常動物で見られたような分布の局在は著明ではなかった。標識ニューロンの形態は、正常錐体型と異常錐体型に分けられた。正常錐体型は、頂上樹状突起を上方に向けるが、異常錐体型は頂上樹状突起を下方に向けたり、側方に向けたり、あるいは頂上樹状突起様突起を複数もつものもあった。 【結論】以上より、SRKの皮質視床路、皮質脊髄路、脳梁交連線維系ニューロンが異所性に分布することが明らかとなった。これはSRKがリーリン欠損動物であることを示している。
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