研究概要 |
リーラーホモマウス(Reln^<-/->;Dab1^<+/+>)およびヨタリヘテロマウス(Reln^<+/+>;Dab1^<+/->)の交配を行い、これにより得られた様々な遺伝子型を持つ動物を研究に用いた。交配により生まれたマウス組織よりゲノムを抽出し、それを鋳型にPCR反応を行って遺伝子型を決定した。reelin、Dab1遺伝子に関してさまざまな組み合わせをもつ生後21日齢マウス(Reln^<-/->;Dab1^<-/->,Reln^<+/->;Dab1^<-/->,Reln^<+/->;Dab1^<+/->,Reln^<-/->;Dab1^<+/->,Reln^<-/->;Dab1^<+/+>,Reln^<+/+>;Dab1^<-/->,Reln^<+/+>;Dab1^<+/+>)を4%パラホルムアルデヒドにて灌流固定し、抜脳後、脳を脱水、透徹してパラフィンに包埋した。包埋した脳を、滑走型ミクロトームにて4μmの厚さの矢状断連続切片を作成し、脱パラフィン後、トルイジンブルーにてニッスル染色を行った。遺伝子背景の決定した2ヶ月齢のマウスに対して、10%HRPを腰膨大に注入し、生存期間を2日間おいた後、1%パラフォルムアルデヒドと1.25%グルタールアルデヒドの混合固定液を用いて灌流固定を行った。その後抜脳し、20%ショ糖含有リン酸緩衝液に浸漬させ、凍結ミクロトームにて大脳皮質の前額断完全連続切片(40μm厚)を作成し、DAB/TMB反応を行い、標識皮質脊髄路ニューロンを検出した。リーラーホモマウスおよびヨタリヘテロマウスの交配を行い、二重欠損マウスを作成した。これらの過程で、さまざまな遺伝子背景をもつ変異体を作成した。これらの変異体の脳のニッスル染色の結果、Reelin,Dab1二重欠損マウスの大脳皮質、海馬、小脳の組織構築は、リーラーとヨタリ同様の激しい層構築異常を呈していた。特に二重欠損マウスの海馬のCA1領域の錐体細胞の配列異常は他の遺伝子型を持つ動物に比べて強い傾向がある。各変異体の腰髄にHRPを注入後、逆行性に標識された皮質脊髄路ニューロンの分布を分析したところ、二重欠損マウスの皮質脊髄路ニューロンの分布は、ヨタリではなく、リーラーに類似した分布パターンを示した。しかし大脳皮質の上層と下層に偏って分布する傾向がリーラーのそれより強いように思われた。したがってリーリンタンパクの下流で機能するDab1タンパクは、リーリンタンパク以外の分子にも制御される可能性があることを示した。
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