研究課題
基盤研究(B)
本研究においては、脳虚血によるPACAPの神経細胞死抑制の作用機序を解明し、さらにヒトの治療に結びつく研究を行うことを目的として研究を行った。主な研究目的として、1)虚血性神経細胞死過程のシグナル伝達機構、とくにPACAPとMAPキナーゼカスケードとの関連性を生理・生化学的に解析する、2)超微量のPACAPが虚血脳においてどのような種類のサイトカインを誘導するのか、3)PACAP KOマウスを用いて内在性のPACAPによる遅発性神経細胞抑制作用を明らかにする、などである。PACAP KOマウスを用いて脳虚血実験を行い、内在性のPACAPが神経細胞死を抑制していることを直接的に証明することができた。さらに細胞内シグナル伝達機構を解明するために、MAPキナーゼのリン酸化について生化学的解析を行なったところ、PACAPはMAPキナーゼのうち細胞死に関与するJNK, p38のリン酸化を抑制することが明らかになった。さらにPACAPによる神経細胞死抑制にはサイトカインのうちIL-6が関与する可能性があったため、IL-6 KOマウスを用いてPACAPによる神経細胞死をしらべた結果、PACAPは星状膠細胞のIL-6を分泌刺激して細胞死を抑制する経路の存在が明らかになった。以上の研究結果から、PACAPによる遅発性神経細胞死抑制は、PACAPが神経細胞に直接的に作用する系とグリア細胞を介して間接的に作用する系の少なくとも2つの存在が明らかになった。今後、GFP標識したPACAP遺伝子を導入したマイクログリア細胞を静注し、脳実質にどのように入るのかをしらべ、さらに海馬の神遅発性経細胞死防御を実証し、ヒトへの臨床応用に結びつく研究を行っていくつもりである。
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