研究概要 |
セマフォリン分子は軸索誘導分子として神経反発性に制御する反発性分子として知られている。セマフォリン分子の神経反発性作用のシグナル伝達系に低分子GTPasc Rhoファミリー分子が関与することが報告されている。分泌型セマフォリンならびに膜型セマフォリンの神経反発作用機序はまだよく分かっていないが,アクチン骨格系制御に関与する低分子GTP結合蛋白質が関与していることが示唆されている。そこで、セマフォリン受容体であるプレキシンの細胞内シグナル伝達を明らかにすることを目的として、プレキシンに結合する分子を調べた。その結果低分子GTP結合蛋白質RhoA活性化分子であるPDZ-RhoGEFを同定した(Hirotani et al.,2002)。さらに、PDZ-RhoGEFはSema4Dシグナルに加え血液由来成分と考えられている生理活性リン脂質であるリゾホスファチジン酸(LPA)シグナルであるRhoAの活性化を仲介することを明らかにした(Yamada et al.,2004)。 また、クラス4膜型セマフォリン、Sema4Dの脳内での機能を明らかにするためその発現を調べたところ、末梢神経系と異なり、オリゴデンドログリアやミクログリアに発現していることを明らかにした。感染によってミクログリアが活性化し、形態変化や運動能の亢進ならびにサイトカインの誘導がおきることが知られている。私達はミクログリアの活性化に伴いプレキシン受容体の発現が誘導されること、Sema4Dはこれらのグリアの活性化を抑制することを明らかにした。現在これらの結果をまとめて発表の準備中である。 以上の結果は胎生期の脳や神経系の発達のみならず、脳内の感染や炎症応答に膜型セマフォリン分子が深く関与していることを示唆している。
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