研究概要 |
C06H5.7は線虫DOPA受容体候補分子としてクローニングされた分子であるが,そのリガンド結合部位は他のモノアミン受容体とは異なり、アミノ基を認識する部位を有していなかった。C06H5.7のリガンドを探索した結果、DOPAそのものではなくアスコルビン酸により産生が抑制されるDOPA代謝物であった。さらに、DOPA様アゴニスト活性を有するL-threo-DOPS代謝物よりリガンドの一つを単離し、3,4-dihydrox ybenzaldehyde(DHBAL)と同定した。DOPA代謝物に含まれるリガンドは少なくとも二つ存在し、3,4-dihydroxyphenyl基を有し、アミノ基およびアルデヒド基を有していない、分子量約150の低分子化合物であることを突き止めた。線虫固体においては、C06H5.7とその相互作用分子(C01F6.6a)は、いずれもpharynxに発現しており、DOPAの咽頭運動への関与が示唆された。実際に、DOPAは咽頭運動を亢進したが、培地中にアスコルビン酸を添加しておくとDOPAの作用が抑制されたことから、アスコルビン酸によりその産生が抑制される代謝物を介してDOPAは咽頭運動を亢進していると考えられた。一方、ラットにおいては、ドーパミンおよび上記低分子化合物以外のDOPA代謝物による血圧降下作用が確認された。従来観察されてきたドーパ作用の少なくとも一部がこの新規物質への変換で説明されうる場合には,哺乳類においても,この誘導体に応答する内在性の系の存在が推定されることとなり,ドーパ神経伝達物質仮説に全く新たな局面が加わる可能性がある。
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