研究概要 |
本研究は、家族性筋萎縮性側索硬化症2型の原因遺伝子産物「ALS2タンパク質」の分子機能解析を通して、ALS2タンパク質の機能喪失による運動ニューロン障害の分子機序の解明を目指すものである。平成15年度は、下記4点に関して解析した。 1.ALS2タンパク質の神経細胞における発現とその生理的意義 ALS2タンパク質を神経初代培養細胞内で強制発現させ、該当タンパク質の細胞内発現、局在および挙動を解析した。その結果、全長ALS2タンパク質は初期エンドゾームに局在し、しかも低分子量Gタンパク質Rab5との共発現によりエンドゾーム構造の肥大を誘起することが判明した。 2.ALS2タンパク質に結合するタンパク質因子の同定 酵母two-hybridスクリーニングおよび生化学的手法によりALS2タンパク質と結合する因子のスクリーニングを行った結果、少なくとも6種類の独立したタンパク質をコードする遺伝子の同定に成功した。現在、クローンの詳細な解析を継続中である。 3.ALS2タンパク質の各ドメインの機能解析 ALS2タンパク質のC末部分に存在するMORN/VPS9ドメインにおけるRab5-GEF活性の触媒機構を詳細に解析するため、活性に必要な最小領域および必須アミノ酸残基の同定を試みた。その結果、MORNモチーフの一部からC末端までのアミノ酸領域(1151-1657aa)が活性に必須な領域であることが判明した。また、少なくともVPS9ドメイン内の進化的に保存された2つのアミノ酸残基(1603P,1617L)が触媒活性に必須であることが判明した。 4.抗体作製 昨年度は3種類の抗ペプチド抗体を作製したが、本年度は組換えALS2タンパク質(2種類)を免疫抗原としたポリクローナル抗体の作製を行った。その結果、昨年度作製したものよりさらに高い抗体価を有し応抗体が得られた。
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