これまで、大脳皮質での神経細胞産生は脳室帯に限られるとする考え方が強かった。しかし、細胞分裂中の核を、リン酸化ヒストンH3に対する抗体で染色すると、細胞分裂は脳室帯の脳室端以外に、脳室下帯、中間帯、皮質板でも起きていることが分かる。その数は無視しうるものではなく、マウス胎生13日目齢(E13)では全体の25%、E15では全体の30%に及ぶ。その構成細胞の一部は、GABA作動性神経細胞を生み出し、他の一部は錐体細胞を生み出すことが我々の研究で明らかとなった。 マウスの大脳基底核原基の一次GABA作動性神経前駆細胞は、増殖能力のある二次GABA作動性神経前駆細胞を生み出し、二次前駆細胞は大脳皮質脳室下帯や中間帯に移り住んで盛んに三次GABA作動性神経前駆細胞とGABA作動性神経細胞を産生する。また、脳室下帯のリン酸化ヒストンH3陽性細胞の中にはNEX(Math2)陽性の細胞があった。我々は、NEX(Math2)-cre knock-in mouseを利用してNEX(Math2)陽性細胞の一部や全てをGFPで標識することにより、NEX(Math2)陽性細胞の一部は分裂能を有し、大脳新皮質上層の錐体細胞のみを産生していることを生体内で示した。この様な特定の神経細胞のみを生み出す神経前駆細胞を、in vitroで脱分化させることなく大量培養するために、現在それぞれの遺伝子発現プロフィールの解析を行っている。
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