研究概要 |
シナプス前終末膜直下のアクティヴゾーンは、網目状の細胞骨格から成なり、いくつかの蛋白質が存在することが最近の研究で明らかにされている。CAZと分類されるこれら細胞其質蛋白質には、RIM1,Munc13-1,Bassoon, Piccolo, CASTと命名された蛋白質が含まれる。RIM1はCASTのC-末端に、BassoonはCASTの中間部に結合して、3つの蛋白質複合体を形成し、Piccoloは、BassoonがCASTに結合する部位と同じ部位に結合することを、研究協力者の大塚稔久(カン研究所)が確認している。シナプス小胞開口放出がアクティヴゾーンで起こると考えられていることから、培養ラット上頸交感神経節細胞シナプスを用いて、これらの蛋白質がシナプス小胞開口放出においてどのような働きをしているかを明らかにするための機能解析を試みたところ、下記の事が明らかとなった。 1)シナプス小胞結合蛋白質であるシナプトフィジンの存在部位と一致する、RIM1、BassoonとCASTの免疫蛍光染色は、これら蛋白質がシナプス小胞の存在部位に発現していることを示す。 2)RIM1、Bassoonと結合する部位のCAST合成蛋白質をシナプス前細胞に導入して、これらの複合体の形成を阻害すると、神経伝達物質の放出量が減少する。 3)CASTと結合する部位のRIM1合成蛋白質あるいは、CASTと結合する部位のBassoon合成蛋白質をシナプス前細胞に導入しても、神経伝達物質の放出量が減少する。 このような実験結果から、CASTがCAZ構造蛋白質の芯となる蛋白質であり、RIM1、BassoonとCAST複合体がシナプス小胞開口放出に必須な役割を担っていることが示唆された(業績1)。 さらに、シナプス小胞開口放出を引き起こす電位依存性N型Ca^<2+>チャネルの持続的なリン酸化によるシナプス伝達効率制御の可能性を、リン酸化部位のミュータントcDNAをシナプス前細胞に導入して強制発現させて解析したところ、膜電位依存性N型Ca^<2+>チャネルのリン酸化によって伝達物質放出が増強されることが確認された(未発表)。
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