培養上頸交感神経節細胞間に形成されたコリン作動性シナプスを用いて神経終末蛋白質、特に、(1)神経伝達物質放出を駆動するCa^<2+>を通過させるN型Ca^<2+>チャネル、(2)Ca^<2+>結合蛋白質と結合するシナプス小胞蛋白質、(3)アクティヴゾーンに特異的に発現する燐酸化酵素、の生理機能解析を試みた。(1)膜電位依存性N型Ca^<2+>チャネルは、αβγサブユニットからなる3量体G蛋白質のβγサブユニットによってチャネル活性が調節されるが、βγサブユニットはSNARE-core複合体に作用してシナプス小胞開口放出を制御する可能性も示されていた。そこで、G蛋白質によるN型Ca^<2+>チャネルおよび神経伝達物質放出の調節メカニズムの解析を試みたところ、1)脳由来βγサブユニットをシナプス前細胞に導入すると、伝達物質放出量が減少する、2)この現象はノルアドレナリン受容体を介する、3)αサブユニットcDNAの発現によって、ノルアドレナリン受容体活性化によるβγサブユニットの作用が減弱する、4)ノルアドレナリン受容体活性化によるβγサブユニットはCa^<2+>チャネルの活性化妨げるが、シナプス小胞プールの大きさは変えないことから、ノルアドレナリン受容体活性化に伴うG蛋白質解離によって生じたβγサブユニットによってCa^<2+>チャネル活性が調節されることが判明した(業績1)。また、N型Ca^<2+>チャネルのCa^<2+>/カルモジュリンの結合の機能解析を試みたところ、結合部位を欠損したチャネルを発現させると、Ca^<2+>チャネル不活性化が起きずに、残留Ca^<2+>増加による短期可塑性が起こりやすくなることが示された(未発表)。(2)SV2は、Ca^<2+>センサーであるシナプトタグミンと結合する。この結合が細胞内Ca^<2+>濃度によって調節される(業績2)。(3)SAD-1の機能阻害実験から、SAD-1がシナプス小胞開口放出に向けての準備段階であるプライミング過程に関与する(投稿中)ことから、これら神経終末蛋白質(1)-(3)は、いずれも、神経伝達物質放出を調節することによって、シナプス伝達効率を制御することが明らかになった。
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