研究概要 |
研究1: 仮説「線条体ニューロンの活動は、外界の事象や自分の行う行動がゴールへの到達(報酬)にとってどの程度の価値があるかの情報を担っているか」を検証する研究を行った。試行錯誤によって、右または左へのレバー倒し運動の中報酬確率の高い選択肢を選ぶ課題をサルに行わせ、線条体のニューロンの活動を記録した。半数以上の投射ニューロンの行動選択前の活動は、報酬確率の高低によって放電頻度を変え、その活動は行動の準備とは関係しなかった。1/3のニューロンは行動選択に依存した活動をした。この結果は、線条体が‘行動の価値'をコードするという仮説と矛盾しないことを明らかにした(Samejima et al.投稿中)。 研究2: 大脳基底核線条体の報酬依存的な学習の仕組みを調べるために、ヒトを被験者として選択肢の報酬確率を試行錯誤によって推定し、確率の高い選択肢を選ぶ課題を行わせ、機能的MRIによって脳活動を調べた。その結果、尾状核が学習に伴う報酬獲得の推移と被験者の行動の改善の時間経過と高い相関を示すことを見出し、線条体が報酬依存的な学習の座であることを明らかにした(Haruno et al.,2004)。中脳ドーパミンニューロンの担う動機づけ情報を明らかにするために、報酬確率と報酬量の異なる選択をサルに行わせ、中脳ドーパミンニューロンの活動を記録した。ドーパミンニューロンは、報酬確率と報酬量が増えるに伴って放電量を増大させたが、確率100%では放電量を減少させた。また、報酬量の増減は放電頻度の増減とは線形には相関しないことも分った。このことは、ドーパミンニューロンによる動機づけ情報のコーディングは、報酬獲得と意志決定の不確実性などの個人的、主観的な要因が大きく影響することが明らかになった(Matsumoto et al.,投稿準備中)。
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