研究概要 |
昨年度の研究により、マウスのPGC採取に使われる10.5日胚、12.5日胚はサルではそれぞれ約30日胚、42日胚に相当するということが分かったため、本年度はこれらの胚からEG細胞株の樹立を試みた。早い発生段階のPGC細胞の方が増殖が良いため、32,36,日胚を使用して実際にPGCが存在すると考えられる背部腸管膜から細胞を採取し、LIF (leukemia inhibitory factor) bFGF, SCF (stem cell factor)の存在下、feeder細胞上で培養を行った。PGC細胞の存在はその指標となるアルカリフォスファターゼ活性の染色により行った。その結果、本培養条件下でPGC細胞は1ヶ月以上維持されるもののEG細胞株の樹立には至らなかった。EG細胞の樹立にはfeeder細胞の影響が大きいことが知られているため、今後feeder細胞の種類を変えて試みる必要がある。 一方で最近ES細胞を卵子や精子へ分化させられることがマウスES細胞でわかってきた。本研究の目的はサル生殖幹細胞株の樹立、及び生殖細胞への分化であるため、ES細胞を生殖細胞に分化させるという方向性が新たに考えられた。またES細胞はEG細胞より未分化であるという利点がある。ES細胞株はラインによって分化傾向が異なり、また生殖細胞に分化させるためには樹立後の継代数が少ない必要があると考えられた。そこで新たなES細胞株の樹立が必要であると考え、ES細胞株の樹立も平行して行った。その結果、4ラインのサルES細胞株の樹立に成功した。これらの細胞株はサルES細胞に特徴的な表面抗原SSEA4などを発現していることを確認しており、現在、それらの多分化能を調査中である。
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