異種胚移植のモデルとして、マウスおよびラットをもちいて検討を行った。 通常の受精時においても胚は母体に由来する補体からの攻撃を受けている。このために補体制御因子をノックアウトされた受精卵は胎生7日目ごろに死亡してしまう、しかし補体制御因子を持たない受精卵も、補体の重要な成分であるC3を持たないマウスに対して移植すると、健康な産子が得られることがすでに報告されている。そこで我々は補体成分であるC3をノックアウトしたマウスおよび、補体成分を枯渇させるためにコブラ毒素を投与した雌マウスに精管をケッサツした雄マウスを交配させて偽妊娠としたのち、ラット受精卵を移植し、その効果を見た。その結果、胎生7から8日まで発育する胎児を得ることができたが、それ以上の胎児の発育にはいたらなかった。そこで日本実験動物中央研究所との共同研究により、胎児を攻撃する可能性のあるNK細胞活性が非常に低いとされるNODスキッドマウスからさらにインターロイキンレセプター2ガンマを欠損させることにより、一段とNK細胞活性を低下させたNOGスキッドマウスを偽妊娠状態として、ラットの受精卵を導入し、着床状況を調べた。その結果これらのマウスにおいてもラットの着床は認められたものの、その発育はおよそday7程度で停止し、死亡していることが判明した。 今後さらに、着床を可能にする系として、胎盤がマウス由来の細胞からなるキメラマウスの系などを作製することにより、妊娠7日の壁を破りたいと考えている。
|