研究概要 |
試験対象となる人工心臓の開発としてラジアル型磁気支持方式を採用した磁気浮上遠心血液ポンプの開発を行った.溶血試験が可能な最大外径87mm.高さ56mmの磁気浮上遠心ポンプを開発し溶血試験を行った.溶血試験は成山羊新鮮血500mlを閉鎖回路に封入し4時間ポンプを駆動し,NIHを算出した.その結果結果,本磁気浮上ポンプは0.0043g/100Lを示し,非常に優れた溶血性能を示し,本研究に使用可能な人工心臓の開発が行えた.また,メゾスケール流れ可視化のために顕微鏡下でメゾスケール流れを観察可能なマイクロ流路をMEMS技術を用いて製作した. 数値流体解析では、血液流れに適した手法と考えられる粒子法(SPH法)を用いて赤血球および血漿すべてを粒子の集団として記述する二次元Two-way粒子法を開発した。その手法を用いて、赤血球の基本的な挙動であるTank Tread運動や軸集中現象を解析し、実験結果と比べ妥当な結果を得ることができた。昨年開発したOne-way粒子法に比べ、赤血球の変形などを正確に表現できるため、赤血球にかかるせん断応力のより正確な評価が可能となると考えられる。 可視化法に関してはマイクロスコピックビデオシステムのレーザ照射装置の改良を行った.2倍の大きさの回転せん断負荷装置の空間速度分布の計測を行い,600rpm(実機4000rpmに相当)の場合に粗さの違いで速度分布に影響がでることを確認した. 人工心臓表面粗さの血液適合性への関与解明に関しては,せん断負荷装置を用い,三種類の粗さの影響を新鮮牛血の溶血試験で調べた.溶血量の平均値(n=8)は,Ra0.1μmでは5.4mg/dL, Ra0.35μmで7.9mg/dL, Ra0.8μmで12.2mg/dLと,Ra0.1μmとRa0.8μmの間の有意差はP≦0.005で,新鮮牛血においても溶血を惹起する閾値が認められた.
|