研究概要 |
試験対象となる人工心臓の開発として磁気浮上遠心血液ポンプの開発,改良を行った.最適化設計を行うことで,種々の試験に対応できるよう,ポンプ性能の向上,高効率化を図った.その結果,血液拍出時に最大揚程254mmHg,最大流量12.7L/minのポンプ特性を達成し本研究に使用可能な人工心臓の開発が行えた.メゾスケール流れ可視化のために顕微鏡下でメゾスケール流れを観察可能なマイクロ流路をMEMS技術を用いて製作した.幅100μm,深さ80μm,壁面疑似粗さ山高さ10μmのマイクロ流路が作成できた.数値流体解析では、昨年度開発したTwo-way粒子法(SPH法)を三次元に拡張した.三次元のTank Tread運動を解析した結果,血球膜の三角分割モデルは膜の変形能に与える影響が大きすぎ,二次元と同程度の変形のみ観測可能であることが分かった.今後,血球膜のモデルを改良し,より現実に近い赤血球モデルに改良していく.可視化法に関しては,マイクロスコピックビデオシステムの撮影感度を向上させ,回転せん断負荷装置の空間速度分布を10μm粒子をトレーサとして計測した.その結果,実機1000rpm相当時では,内筒への粗さ付加により乱れが増加することを確認した.また,粗さの付加方法により乱れの増加が変化することを確認した.人工心臓表面粗さの血液適合性への関与解明に関しては,回転型せん断負荷装置内筒の表面粗さを加工する方法として,新たにサンドブラスターの粒子サイズと圧力の調整によりランダム形状の粗さを得る方法を開発した.本せん断負荷装置を用い剪断速度3,750s-1で溶血試験を行い,接液部の表面粗さ0.6μmRaと0.8μmRa間で溶血が急増することがわかった.また,表面粗さの面積を変化させても溶血量は変化せず,表面粗さによって引き起こされる高剪断応力が,溶血を惹起することを示唆するデータを得た.
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