研究概要 |
溶血試験が行える95mmx95mmx70mmの磁気浮上遠心血液ポンプの開発を行った.血液拍出時に最大揚程160mmHg,最大流量13L/minのポンプ特性を確認し溶血試験を行いバイオポンプの約2倍の溶血性能であることを確認した.人工心臓血液適合性を数値解析的に評価する、三次元Two-way粒子法(SPH法)のモデルを完成させた。その中で、昨年度の結果より、血球膜の三角分割モデルは膜の変形能に与える影響が大きすぎることが判明したため、多角形血球膜モデルを導入し現実的な赤血球の変形特性を表現可能とした。また、新たな問題点として、赤血球内部の液体粒子が膜粒子間の間隙から漏れ出す点が浮上したが、それを解決する新しい膜-内部粒子の相互作用モデルも提案した。回転せん断負荷装置内の流れの、表面粗さの違いによる流れ場の変化を流れの可視化計測および数値流体力学解析により計測および解析し、装置内筒の表面粗さを0〜2ミクロン程度まで変化させても,乱流強度は著しくは変化しないが、周方向平均流速の速度分布に変化をもたらすことを確認した.また、その流れの可視化計測において、乱流強度の計測精度は,粒子画像の粒子数が影響することがわかり、前年度に得られた乱流強度の増加は、表面粗さによる光の散乱がもたらす粒子画像の視認粒子数の増加が原因であることが分かった。人工心臓表面粗さが溶血に与える影響については、回転型せん断負荷装置内筒表面広範囲に、サンドブラスターを利用して、異なる面積の表面粗さ(Ra0.8μm)を付加した実験を行った。その結果、せん断速度3,750s^<-1>において、回転方向に粗さ面積を増加させても溶血量は変化しなかったが、回転軸方向に粗さ面積が増加すると、溶血量も増加することがわかった。従って、人工心臓内で生じる溶血は、粗さ面積の値だけでなく、粗さ方向も重要であることが示唆された。
|