研究概要 |
頻脈性不整脈の成因の一つとして,近年,異常興奮伝播云播(リエントリ現象)が注目され,光学計測による研究がなされている。本研究では心臓活動電位光学計測装置を発展させ,心臓表面約3/4の広領域をカバーし,活動電位マッピングを3次元表示できる心臓活動電位計測システムを開発した。システムは光源として青緑色高輝度LED,2台の高速度デジタルビデオカメラレコーダ,レーザ投射型3次元形状測定装置から成り,各計測器の灌流心に対する距離および角度を用いて画像合成を行った。従来の1面からの撮影に比して1.5倍以上の範囲で心臓表面の活動電位を計測することが可能である。本システムを用いた実験において,左室中央からの点電極刺激による興奮伝播を計測して3次元位置情報から正確な興奮伝播速度を算出し,従来の興奮伝播速度算出法が不適切であることを指摘した。 また,近年のシミュレーション解析や基礎実験にて,点電気刺激を心筋組織へ印加すると電極近傍の数mmの領域に脱分極領域と過分極領域が複雑な形状で分布した分極現象が誘発される仮想電極現象(Virtual Electrode Polarization,以下VEP)が報告されている。このVEの実験的検討に高い時間分解能・空間分解能を有する本計測システムを活用した。点通電刺激誘発VEP現象から開始する心臓興奮はMake/Break興奮の2種類あり、さらに陽極/陰極刺激で別の現象が発生する。心筋線維に沿った方向(L方向)あるいは心筋線維に垂直な方向(T方向)に進む先行興奮の再分極相に通電刺激を加えると,陽極/陰極刺激ともに点刺激後VEPの過分極領域からBreak興奮が発生し,その四端から開始する4つの旋回興奮のうち先行興奮が先に回復する側の2つが衝突し融合して旋回が消滅し,L/T方向に対して対称に同じ形状・大きさで形成されるため旋回が残ることがないという結果を得た。
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