研究分担者 |
福田 秀昭 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (50014163)
永井 正洋 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助手 (10013971)
宮入 裕夫 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (50013892)
大野 喜久郎 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50014238)
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研究概要 |
手術時に硬膜の代替として用いるための生体吸収性人工硬膜の開発を目的して研究を行った.まず吸収性の素材として,乳酸,グリコール酸,カプロラクトンの共重合体を利用し,人工硬膜の試作を行った. 試作人工硬膜の評価として,ブタ硬膜を用いた液漏れ試験を行った.新鮮ブタ頭部より硬膜を採取し,人工硬膜と縫合して耐圧試験用試料を作製した.すでに開発済の加圧試験装置に取り付け,37℃生理的食塩水で内部を満たし,最大脳圧に相当する60mmHgまでの圧を負荷して1分間あたりに漏出する液量を測定した.その結果,縫合の針孔よりの液漏れは生じなかったが,圧を増大すると材料と硬膜の間の隙間からの液漏れが観察された.この液漏れは縫合方法に依存し,水平マットレス縫合で糸の張力を大きくするような場合に顕著であった.これに対して単純連続縫合で糸の張力を少なくし,やや縫合のピッチを小さくすることにより,完全に液漏れを防止することが可能であることが分かった. 試作人工硬膜の生体適合性を調べるために,ウサギを用いた硬膜再建実験を行った.ウサギ頭蓋を開頭し,正中の両側に5x10mmの硬膜欠損を設けた.試作した人工硬膜を硬膜欠損部に留置し,硬膜再建モデルとした.2,4,6週後に採取して,液漏れ状況,硬膜の再生状況,ならびに周囲組織の反応を調べた.その結果,6週の時点で人工硬膜は線維組織で被われカプセル化されていた.加圧試験を行い液漏れを調べたところ,60mmHg以上まで全く液漏れは生じなかった.また採取された試料について組織標本を作製し,染色して光学顕微鏡観察を行ったところ,人工硬膜の周辺で炎症などは全く見られず,健全な線維組織像を観察できたので,硬膜が再生しつつあるものと判断された.
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