研究概要 |
本研究では、多数のα一シクロデキストリン(α-CD)の空洞部を貫通したポリエチレングリコール(PEG)の両末端に嵩高い生分解性基を導入した串刺し状高分子(生分解性ポリロタキサン)を基本骨格として、多数のα-CD水酸基に種々のリガンドを導入し、α-CDのPEG鎖上での位置が自由に変化する超分子の特徴から、細胞表面レセプター発現・分布の時間変動に同調してレセプターとの結合を持続する新しい生体材料を設計することを目的としている。本年度は,モデルリガンドとして単糖を選択し,α-CD貫通数の異なる種々のポリロタキサンへの導入とその結合体の溶液特性を検討した。その上で,赤血球凝集阻害活性からレクチンであるコンカナバリンA(ConA)との相互作用におけるα-CD貫通数の影響を考察した。予めカルボキシル基を導入したポリロタキサンに還元糖末端をアミノ化したマルトース(Mal)を縮合反応によって導入した。このとき,ポリロタキサン中のPEGの分子量は一定にして(Mn=20,000),Mal導入量の異なるMal-ポリロタキサン結合体(Mal-PRX)を合成した。PEGの分子量の増大に伴ってポリロタキサン1分子あたりのMal導入数を20〜240まで調製した。^1H-NMR解析から、CD貫通数が約85(貫通率:38%)であるときにマルトースの分子運動性が高いことが見出された。これら結合体のConAによるMal-ポリロタキサン結合体の認識を,赤血球凝集阻害から定量した。すべての結合体はMalよりも低濃度で赤血球凝集を阻害したことから,多価相互作用によりConAとの親和性が増大した。CD貫通数を増大すると、Mal導入数が240付近においてCD貫通数が約85(貫通率:38%)であるときに最大の凝集阻害効果を示した。このことは,単に1分子中のMal導入数や密度に親和性が依存しているのではなく,マルトースの分子運動性がConAとの親和性に関与していると考えられた。
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