研究課題
本研究では、多数のα-シクロデキストリン(α-CD)の空洞部を貫通したポリエチレングリコール(PEG)の両末端に嵩高い生分解性基を導入した串刺し状高分子(生分解性ポリロタキサン)を基本骨格として、多数のα-CD水酸基に種々のリガンドを導入し、α-CDのPEG鎖上での位置が自由に変化する超分子の特徴から、細胞表面レセプター発現・分布の時間変動に同調してレセプターとの結合を持続する新しい生体材料を設計することを目的としている。本年度は、糖鎖結合タンパク質(レクチン)を固定化した金センサー表面における糖鎖導入ポリロタキサンとの相互作用を解析し、その迅速性について速度論的に評価した。さらに、第三級アミンを多数導入したポリロタキサンの両末端にジスルフィド(SS)結合を導入した生分解性ポリロタキサンを合成し、ポリロタキサンの超分子としての特徴を遺伝子とのコンプレックス形成・解離の制御へ応用可能かどうかを検討した。これまでに報告した3つのタイプのマルトース導入ポリロタキサンを合成し、予めカルボキシメチル化デキストランにてコートされた金表面にコンカナバリンAを固定化した表面に種々の濃度条件にて添加し、表面プラズモン共鳴法による結合・解離挙動をモニターした。得られた曲線から結合速度及び解離速度定数を算出したところ、最も分子運動性の高かったポリロタキサンでは、結合速度定数が他のポリロタキサンよりも100倍以上大きかった。従って、ポリロタキサン特有のα-CDの移動によってマルトースがコンカナバリンAの結合部位に認識されるように調整され、迅速に分子認識されていることが示唆された。また、第三級アミンを多数導入したポリロタキサンの両末端にSS結合を導入し、SS結合の還元と超分子構造の解離が複合体からのDNA放出と遺伝子発現に与える影響を検討した。末端SS結合の還元に伴うポリロタキサン超分子構造の解離に同調してポリカチオンからオリゴカチオンに変換され、この分子構造変換がDNAとの静電的相互作用を減少すること示唆された。さらに、この特徴が遺伝し発現へ及ぼす影響を培養細胞から検討したところ、遺伝子発現も向上する傾向が見られた。
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