研究課題
基盤研究(B)
臓器としての心臓における各心筋細胞内で分子単位のクロスブリッジ形成過程を評価するべく、ラット摘出心ランゲンドルフ灌流標本を用いて実験を遂行した。昨年度までの成果として、左心室自由壁の心外膜側と心室壁中層のクロスブリッジ動態を個別に解析し、収縮期には心外膜側心筋、心室壁中層心筋のクロスブリッジ動態と左心室圧の発生過程が良く一致することを見出した。しかし弛緩期には、心室壁中層のクロスブリッジの解離が、心外膜側心筋に先行することを明らかにしてきた。本年度も局所心筋クロスブリッジ動態の観察を目的に、ラット摘出心ランゲンドルフ灌流標本を作成した。房室ブロックを作成後、右室自由壁より2Hzで刺激しつつ、左心室内に留置したラテックスバルーンにより左室容積の制御と左心室圧を記録した。左室容積は左室拡張末期圧が10〜20mmHgとなるように調整した。心臓標本はSPring-8 BL40XUのハッチ内にマウントされ、X線が左心室自由壁の接線方向に入射するよう調整した。ある部位での心室壁X線回折像を2心拍分(1秒間、70画像)記録した後、心臓標本を左室自由壁方向あるいは心室中隔方向に200μmスライドさせ、心室壁を心外膜側から心内膜側までくまなく走査しつつ拍動時のX線回折像を記録した。心外膜側心筋および心室壁中層心筋の収縮直前のミオシン格子間隔を比較したところ、心外膜側心筋のミオシン格子間隔は心室壁中層心筋より狭いことが判明し、左室容積を変化させた場合でもこの関係は保たれていた。心外膜側心筋と心室壁中層心筋で筋線維の構造に差がないと仮定すると、狭いミオシン格子間隔は筋節が引き延ばされた結果、ミオシン格子間隔が狭まったと考えられる。乳頭筋での実験では、短い筋節長では小さい収縮張力と短い収縮持続時間が認められており、局所心室壁でFrank-Starling則が筋層ごとに異なる可能性が示唆された。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (12件)
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