研究概要 |
体外循環により惹起される炎症反応、長期透析による腎不全や合併症など、生体内で発生したフリーラジカル(活性酸素)は様々な臓器障害を引き起こす。これは生体内で保たれていた酸化還元調節機能が破綻した結果であり、さらに、血管内細胞や組織にも損傷を与え血管病態の原因にもなる。ビタミンE固定型ダイアライザーや、抗酸化剤を投与する試みがなされているが必ずしも十分な効果は得られていない。本研究では、抗酸化機能を持つ新規金属ポルフィリン錯体を合成、生体内フリーラジカル(O_2^-,H_2O_2,NO)の消去を行い、臨床応用可能な次世代型抗酸化剤を構築する。 本年度は、特にミトコンドリアへのターゲティング機能を有する新規ペプチド修飾型金属ポルフィリン錯体の合成とその機能評価を行なった。ミトコンドリアは細胞内で活性酸素を最も産生し、発生する部位である。ミトコンドリアへ特異的にSOD活性を有する金属ポルフィリン錯体を輸送することができれば、その抗酸化能は飛躍的に向上することが期待される。シグナルペプチドを修飾したMnポルフィリン錯体はミトコンドリア外膜への特異的な輸送を示し、新しい抗酸化剤の可能性が示された。 さらに、ラットを用いたin vivo実験も行い、SOD活性を有する金属ポルフィリン錯体が生体内で抗酸化能を発現できるか検討した。今回は特に慢性腎不全モデルを用い評価したが、その結果、in vivo ESR、血液検定、尿検定、組織評価よりMnポルフィリン錯体の生体内有効性が示された。抗酸化剤が慢性腎不全の改善を示した初めての報告である。
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